ノルウェーの話をちりちゃんにしたら、
「かもめ食堂」を薦められた。
フィンランドを舞台にした邦画だった。
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フィンランドという国は、今更ながらだが、
これまでも全く意識になかったわけではなかった。
オレゴンの高校で知り合ったフィンランド人のAlexとずっと文通していたこと。
その手紙のあて先が、Suomiだったこと。
Suomiというのは、Finlandという意味なこと。
彼女がHelsinkiという街に住んでいるということ。
Helsinkiは首都なのに、森があって自然に囲まれていること。
彼女は森の中をサイクリングするのが好きなこと。
彼女はベトナム系で、ボートピープルと呼ばれる人々がいるということ。
徐々に分かったことはあったけど、
当時の私の関心はもっぱらアメリカにあり、
彼女の国について知ろうとはしていなかった。
その後、私はロシアに留学し、
サンクト・ペテルブルグのフィンランド湾の岸辺に立った。
北の果てから吹く冷たい風を顔に感じながら、
そういえば、この小さな海の反対側にAlexがいるのだなぁと思ったりもした。
彼女は数年前に日本の私を訪れた。
marimekkoのポーチをお土産に。
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「かもめ食堂」を観て、
それがフィンランドだからか、北欧だからなのか、小林聡美だからかは分からないけど、
ものすごくしっくりくるものを感じた。
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それを観ながら、ガイコクに集う日本人って、そういえばそうだなーと懐かしく思い出した。
日本にいたら、出会っていないであろう人々と、
特に共通点もなく、特に親しくもならないであろう人々と、寄り添い、
互いに必要とするということ。
その関係は、外国にいるから上手く行くものかもしれない。
「かもめ食堂」の3人は、まさにそんな人たちだったと思う。
そして、ガイコクにやってくる日本人は、心に傷を負った人たちが意外と多い。
何か突破口を見出そうとしている人。
互いに根掘り葉掘り聞かずに、でも快活に支えあっていくということ。
そして、またいつかは戻っていく人がいるということ。
残る人もいるということ。
人はいつまでも同じではないということ。
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うまく書けないけれど、自分の心にとても合っていた映画だった。